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2026.09.29

地域課題は、会議室だけでは見つからない――「困りごと」を事業につなぐ聞き取り

人口減少、空き家、移動手段、医療、福祉、担い手不足。地域課題を示す統計は、地域の大きな傾向を知るために欠かせません。しかし、数字だけでは「誰が、どんな場面で、何に困っているのか」までは見えてこないことがあります。

相澤国弘が2005年に蔵王の別荘地へ着任した際、最初に取り組んだのは、完成した計画を持ち込むことではなく、定住者の話を聞くことでした。そこで聞いた日々の不安が、地域の関係者との勉強会や、その後の蔵王福祉の森構想へつながっていきました。

地域の声を、単なる要望の一覧ではなく、続けられる事業の入口として受け取るには、何を確かめればよいのでしょうか。

要望ではなく、「困る場面」を聞く

「病院が必要です」「移動手段がほしい」「空き家を何とかしてほしい」。こうした言葉を、そのまま施設やサービスの名称へ置き換えるだけでは、必要な仕組みを見誤ることがあります。

例えば「病院が必要」という声の背景には、通院先が遠い、家族が送迎できない、冬の運転が不安、体調が悪いときの相談先が分からないなど、異なる困りごとが考えられます。必要なのは、最初から答えを決めることではなく、次のような具体的な場面を聞くことです。

● 誰が困っているのか

● いつ、どこで困るのか

● 現在はどのように対応しているのか

● 何があれば負担が軽くなるのか

● 同じ困りごとを持つ人がほかにもいるのか

場面が具体的になると、医療機関だけでなく、送迎、見守り、相談窓口、買い物支援など、複数の選択肢を比較できるようになります。地域課題を正しく定義することは、解決策を急いで決めないことから始まります。

声の大きさと、必要性の大きさは同じではない

会議で発言しやすい人の意見だけを集めると、地域の全体像を見失う場合があります。

外出が難しい高齢者、障害のある方、子育てや介護で時間を取りにくい方、地域との接点が少ない若者や移住者。困りごとがあっても、会議へ出席できない人や、自分の要望を言葉にしにくい人がいます。声を上げていないことは、課題がないことを意味しません。

聞き取りの方法も、一つに絞る必要はありません。少人数での対話、個別訪問、日常的に利用する店舗や施設での会話、支援者を通じた確認など、相手に合わせて入口を用意します。

また、話を聞かれる人を「支援される側」だけに置かないことも大切です。地域の歴史を知っている、近所の変化に気づける、誰かへ声を掛けられる、昔の技術や暮らしの知恵を伝えられる。そうした力も、地域を支える役割です。誰もが担えることを持つという蔵王福祉の森構想の考え方は、聞き取りの段階から始まっています。

「使う人」「担う人」「費用を支える人」を分けて考える

必要性が高い取り組みでも、運営の仕組みがなければ長く続きません。そこで、聞き取った課題を事業へつなぐ際には、少なくとも三つの立場を分けて考えます。

一つ目は、サービスを使う人です。どのくらいの頻度で、どのように利用するのかを確かめます。

二つ目は、現場を担う人です。専門職だけでなく、地域企業、住民、農業者、宿泊・飲食事業者など、既にある人材や事業の力を組み合わせられないかを考えます。

三つ目は、費用を支える人や仕組みです。利用料、事業収入、委託、複数事業からの負担など、継続に必要な資金の流れを整理します。

利用者と担い手、費用負担者が同じとは限りません。だからこそ、善意だけに依存せず、それぞれに無理が生じない形をつくる必要があります。社会問題を事業で解決するとは、課題を収益の材料にすることではなく、必要なサービスを続けられる構造に整えることです。

小さく始め、地域へ返し、次を決める

聞き取りの後、すぐに大規模な施設や制度をつくることが最善とは限りません。既存の建物、車両、店舗、人材を生かし、小さな実証から始める方法があります。

実施した後は、利用した人だけでなく、担った人、周辺で暮らす人にも結果を返します。便利になった点、続けにくかった点、想定していなかった負担を確認し、継続、修正、終了を判断します。

地域づくりは、一度の聞き取りで完成するものではありません。話を聞き、試し、結果を共有し、また聞く。その循環を重ねることで、地域に必要な事業と、地域の人が担える役割が少しずつ形になります。

地域の声を、実行できる構想へ

ガイアプランニングでは、相澤国弘による講演、研修、現地視察、フィールドワークのほか、地域づくりに関する事業構想支援を承っています。

課題は見えているが、関係者の意見をどう整理すればよいか分からない。視察や講演を、その後の事業づくりにつなげたい。地域資源を生かしながら、継続できる仕組みを検討したい。そのような段階から、地域の状況と目的をお聞かせください。

株式会社ガイア ガイアプランニング
電話:0224-26-8892
お問い合わせフォーム

参考リンク

● 株式会社ガイア「講演・研修・地域づくり支援のご依頼」(2026年8月18日)

● 地域資源活用・地域連携中央サポートセンター「別荘地の衰退を救った『医療・福祉・農泊』の循環」

● 七十七ビジネス振興財団「七十七ビジネス情報 2026年夏季号・相澤国弘インタビュー」